
三重県伊賀市大野木にある「岩根の磨崖仏」です。
この仏さまに会うために5回も訪問することになりました。
当初は菅原大辺神社の近くにあるという情報から駐車場近くにそんなに大きくない岩に磨崖仏を見つけてこれだと思ったのですが、違うことを知りました。
まさか学校のプールの脇が旧街道とは解らずに相当探し回りました。
川の土手沿いにも磨崖仏どころか岩も存在せずにあきらめました。

県指定文化財 彫刻
岩根の磨崖仏
この大岩は幅約8m、奥行約7m、高さ約3mの花崗岩の自然石です。
ほぼ平面となっている南面には、向かって右側から釈迦如来、阿弥陀如来、地蔵菩薩を肉彫し、さらに左側には五輪塔が浮彫されています。

釈迦は過去仏、阿弥陀は未来仏で過去と未来の関係でよく一組で考えられており、また阿弥陀は極楽の教主、地蔵は地獄からの救済がおもな役割で表裏一体の関係にあります。
この三尊を並べて人々は極楽浄土への往生を祈願したのでしょう。
諸尊の間には、蓮花を入れた花瓶が添えられ、地蔵菩薩の両すそ部には左右二体づつ合掌する地蔵菩薩坐像が見られます。
また地蔵菩薩の両側には、右に「徳治第一年月日(1306)」左に、「願主沙弥六阿弥」と刻銘が確認されています。
五輪塔は、死者が空風火水地の五大へ帰っていったことを象徴的に示し、死者への供養の意が込められています。

なお、岩面の四隅に方形の孔が見られますが、この孔に柱を差し込み、庇状の覆屋がかけられていたと考えられます。
これらの仏達は、鎌倉時代後期の作とみられ、激動の中世の世から、穏やかな視線で現実を見つめてきました。
人間の愛の深さと悲しみを包んでいるかのように見える眼に、この世はどのように映ったのでしょうか。
かつて、仏の前には大和と伊賀を結ぶ街道があり、通りかかった多くの旅人は、どんなにか心がなごんだことでしょう。
昭和五十四年三月二十三日指定
伊賀市教育委員会』
※ 境内掲示より
益々磨崖仏等の石造仏の興味が湧きました。